11 骨粗鬆症財団20周年、誠におめでとうございます。財団におきまして10年余にわたり、理事として携わらせていただいておりますが、設立20周年を迎え、その成果を称えるとともに、今後へのさらなる期待を念じ、お祝いの言葉とさせていただきたいと思います。 今から20年前の平成3年、当時の厚生省の認可を受け「財団法人骨粗鬆症財団」が誕生しました。当時、既にわが国は世界一の長寿国家となり、65歳以上の高齢者が他国に類をみない程、急速に増えておりました。そのような中、高齢化により骨粗鬆症の増加に拍車がかかることを想定し、「高齢社会が骨粗鬆症を増やす」と提言されたのは、まさに先見の明がありました。さらに「骨粗鬆症の予防は健康長寿の基本であり、自立して生産性のある日常生活を送るために財団は努力を惜しみません」と提言しました。加えて、当時は一般国民はもちろん、医療従事者にさえ十分に行き渡っているとはいえなかった骨粗鬆症を「誰もが知っている病気にします」と謳い、20年間にわたる財団のたゆまない努力によりこのことは達成できたと思います。特に一般の方々に、この難しい名称の「骨粗鬆症(こつそしょうしょう)」を日常会話に出てくるほど普及させたのは、大きな成果と言えると思います。しかしこの名前を知っているだけで、未だ正しく理解され、知識が広く行き渡っているとは必ずしもいえないことも事実であります。 これだけ医療環境が整備されているにもかかわらず、残念ながらわが国ではまだ骨粗鬆症による骨折が減っていません。21世紀になって骨粗鬆症による骨折が増えているのはスペインとわが国だけといわれています。 この原因として10年前に比べて、10%ほど骨粗鬆症による治療を受けている人は増加しましたが、それでもまだ治療を必要とする人の30%程度といわれています。治療を必要とする人の70%が治療を受けていないわけですから、骨粗鬆症による骨折はなかなか減りません。また、わが国の骨折者の96%は治療薬を服用していなかったといいます。この原因としては、受診すべき人が受診していないことと、投薬されるべき人が投薬されていないことが考えられます。これらの件に関しましては財団ばかりでなく、骨粗鬆症学会にも大きな責任があると考えております。 さらに最近では、ビタミンDの生化学的指標である25(OH)Dがわが国の高齢者では85%もの方々に欠乏ないし不足していることがわかり、このことは薬剤の効果を著しく損なうことも判明しております。加えて、従来は処方さえしていれば患者さんは服薬していると考えられていましたが、当然の日本骨粗鬆症学会理事長国際医療福祉大学教授山王メディカルセンター・女性医療センター長太田 博明骨粗鬆症財団による20年の成果と今後への期待
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