骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
10/68

9一般社団法人Jミルクは酪農乳業関係者とともに、生乳及び牛乳乳製品の生産・流通の安定並びに消費の維持拡大を図る活動をしています。 第二次世界大戦が終わった昭和20年から数年間、日本は深刻な食糧不足を抱えており、児童の体格の著しい低下が問題となり、現在の形の学校給食が始まりました。以来、昭和32年ごろから学校給食で牛乳が子どもたちに飲まれるようになりました。 学校給食は成長期の中高生における習慣的なカルシウム摂取に役立っています。給食のない日の昼食のカルシウム摂取量は給食のある日の3分の1以下という研究結果があります1)。また中学1年生から高校3年生までの5年間(6回)平均牛乳摂取状況と骨量増加の関係を見ると、男女とも牛乳摂取量が増えるに伴い、牛乳を飲まないグループに比べ有意に骨量が増えていました2)。学校給食における牛乳は、カルシウムの大切な補給源になっていると言えます。 骨密度は女性で15~18歳、男性で20歳頃までに最大となります。青少年期にカルシウムをより多く骨に蓄えることが強い骨を維持して生きていくために必要ですから、学校給食で牛乳が提供されることは大きな意義があります。 成人から老齢期にわたっては、牛乳摂取量が多い者(1日コップ1杯以上)と少ない者(週に1回以下)を比べ一般社団法人 Jミルク学術調査グループた結果、牛乳摂取習慣が老齢期の骨密度の高さと関連していることが明らかになっています3)。 カルシウムはいろいろな食品から摂ることが食事全体の栄養バランスから言っても重要なことです。ただ、カルシウムを多く含む桜エビや小松菜などで十分なカルシウム摂取量を満たすには1食でたくさんの量を食べなければなりません。これに対して毎日牛乳コップ1杯(200ml)飲むことで1日のカルシウム推奨量の3分の1を満たすことができ、これは無理なく習慣化できる量です。また、カルシウムの吸収率から言っても、カルシウム摂取における牛乳は非常に優れた食品であるということができます。 牛乳には乳糖やビタミンD、たんぱく質であるカゼインなどカルシウム吸収を促進する物質が多く含まれています。牛乳中に含まれるカルシウムは水に溶けにくいリン酸カルシウムという形で存在しますが、カゼインと結合することで安定的に分散して存在することができます。また、カゼインは消化酵素により分解され、カゼインホスホペプチド(CPP)というペプチドに切り出され、このペプチドもカゼインと同様にカルシウムを分散保持する能力を維持しています。こうしたカルシウムの状態が腸カルシウムは骨や歯の材料になるばかりでなく、生きていく上で様々な働きを担っています。にもかかわらず、日本人のカルシウムの摂取量は、1日あたりの推奨量に達していないのが実情です。カルシウムはもともと吸収率の低いミネラルですが、牛乳にはカルシウムの吸収率を高めるメカニズムが存在し、他の食品に比べて吸収率が高いことが知られています。そこで牛乳についてお話を伺いました。―牛乳と学校給食の関係について教えてください。―牛乳からカルシウムを摂ることは骨密度と密接な関係があるのですね。―ほかの食品と牛乳のカルシウムとはどんな違いがあるのですか。―なぜ牛乳のカルシウムはほかの食品と比べ体に吸収されやすいのですか。池上 秀二さんいいね!  牛乳のカルシウム

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る