骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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予防にとって初めの一歩骨量を測定することがまず家族単位で骨粗鬆症を考えてほしい21司会: 三浦 雅一 (みうら・まさかず)(公財)骨粗鬆症財団 理事北陸大学理事・薬学部教授/健康長寿総合研究グループ長三浦 糖尿病だと肥満の解消とか、高血圧だと塩分を控えるとか、広く知られている取り組みがあり、予防として自ら率先し、実践している人も多い気がします。骨粗鬆症の予防方法が浸透しないのは、生活習慣病のひとつという意識が低いからでしょうか。石橋 骨粗鬆症の場合、血圧とか血糖値のように検査値が目に見えてよくなったということがないため、予防や治療の効果が実感しづらいという特徴があります。頑張ってYAM値60%の人が仮に10%アップしても66%ですから、目標値に大きく届かないとモチベーションが続かないかもしれません。そこで、私たちは骨折予防の重要性や予防の具体策について説明し、骨密度が上がったときは患者さんと一緒に喜ぶといったことを意識的にする必要があります。小川 骨粗鬆症は重要な疾患だと理解されていても、生活習慣病であるという認識は、診療の現場でも十分に浸透していないかもしれません。内科領域でも実臨床に結びつけづらく、例えば、糖尿病やCOPD (慢性閉塞性肺疾患)の患者さんは骨折リスクが高いですが、専門の疾患管理に重点を置きがちで骨粗鬆症の予防や骨折対策まで力を注げない場合も少なくないと思います。寺内 女性の多くが、閉経する、更年期を迎えるという年代になってようやく心配になるようです。骨粗鬆症の場合は、10歳代、20歳代にやるべきことをやっていないのが一番の問題です。石橋 若い人も、現時点では骨粗鬆症を自身で実感できる健康問題と捉えていないだけで、運動や栄養が大切ということは頭で理解しているような気はします。例えば、講演会などに併せて骨量測定体験会を開催すると非常に人気が高く、講演は聞かなくてもいいが骨量は測ってほしい、と来場される人までいたりします(笑)。骨の健康に関心がないわけではなく、何から始めたらいいか、何が大切なのかがわからないから取り組めないということです。私たち医療従事者が常識的に知っていることがみんなの常識になれば、同じような温度で考えてもらえるのかと思います。三浦 例えば、内科に行って「最近体重が増えた」と言えば糖尿病の検査を受けることができます。骨粗鬆症で当てはまるとしたらどのような症状でしょうか。石橋 骨粗鬆症の場合だと「最近、ちょっと背中が丸くなってきた」とか「最近、背が縮んだ気がする」というだけでも、それは圧迫骨折の可能性を示唆する症状なので医療機関にかかっていただくと良いです。 ただ、「身長低下くらいのことで病院に行っていいのかな」と思われる方が多いので、そこが知識の啓発のポイントとなる訳です。さらに、母親が足の付け根の骨折を起小川 純人 (おがわ・すみと)(公財)骨粗鬆症財団 評議員東京大学大学院医学系研究科 老年病学准教授

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