骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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23※2 多剤服用の中でも害をなすもの※3 患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けること三浦 骨粗鬆症患者さんは高齢者が多いですが、患者さんの側では「年だから仕方がない」と治療をあきらめてしまうことも多いと聞いていますが、いかがですか。小川 骨粗鬆症に対する予防・治療対策は転倒予防対策とともに高齢期においてとても重要である、と繰り返し伝えていくことは大切だと思います。ひとたび骨折が起きてしまうと、生活機能の低下や死亡リスクの上昇につながる場合も少なくない、と理解してもらう努力も必要でしょう。寺内 私が骨粗鬆症で対応している患者さんは60歳代が多いのですが、「薬は一生飲まなければいけないのですか」とよく質問されます。60歳代は骨粗鬆症患者さんの中で比較的若い層ですので、一体いつまで続ければいいのかと思われるのでしょう。また「腰椎の骨密度が2%上がりましたよ」とデータをお示ししても「ほんのちょっとですね」と、反応がいまひとつです。骨粗鬆症の治療目標が実感しづらいのが骨粗鬆症治療における大きな問題点と思います。三浦 現在の骨粗鬆症治療薬は有効性が高く、治療に使えば少なからず骨密度の上昇がみられます。骨全体のことを考えると2%、3%はすごく増えているという実感なのですが、患者さんにとってみると確かに治療継続のモチベーションにつながりそうな数字ではないようです。寺内 「実はこの間、転びました」とおっしゃる患者さんがいます。それを聞いて「転んでも骨折しなくてよかったですね、これからも(骨粗鬆症の治療を)頑張りましょうね」と答えますが、骨が折れなくてよかった、という言葉が治療の成果と納得できるかどうかです。骨が折れなかったのは単なる偶然かもしれず、結果、骨折予防より骨密度の上昇を治療目標に設定せざるを得なくなります。しかし、骨密度も2%上がって翌年また1%下がるという繰り返しになりますから、「ちょっとしか上がっていない」とがっかりされる患者さんの言葉は考えさせられるものがあります。三浦 骨密度は低いが骨折はないという低リスクの患者さんが治療を続けるモチベーションの継続は難しそうです。石橋 私が診ている患者さんには、10年以上続けて外来にいらしている方も多いのですが、その方たちの骨密度の長期経過をグラフにすると、10年間治療を継続した結果、骨密度が上がっている方が多く、10年前との比較で骨密度が減少したという患者さんはまずいないです。長期にわたって治療を続けることは本当に大事なのだと感じますし、そういったことを患者さんにもお話しして継続の動機づけにしています。また、骨粗鬆症の治療は「老後の貯金」みたいなもので、しっかり貯めておけば将来の安心度が増しますよといったこともお話しします。三浦 これが高血圧の患者さんの場合、比較的長期にわたって薬を飲まれていますし、途中から薬をやめてサプリメントに変えるというような人もいないと思います。石橋 確かに薬を続けてもらうことは重要で、そこには工夫も必要です。私自身は、骨密度検査の大きな目的は薬を続ける動機付けだと考えています。薬を飲んでいても3%の上昇しかないと残念がる患者さんには、「骨密度は、運動を半年から1年間、毎日頑張ってやっと1%か2%上がるだけなので、3%というのは実はけっこう上がっているのですよ」と説明することも多いです。数字自体は小さく感じますが、続けた分だけの効果が出ていることを理解してもらう訳です。また薬があまり好きでない人には、骨の薬は効果のエビデンスが高く、サプリメントよりずっと効果が高く、副作用が少ないことをしっかり話しています。三浦 ただ、高齢者と薬に関しては何種類以上処方されていたら問題かという質問をよく受けます。中には11種類、12種類の薬を飲んでいる高齢者がいます。高齢者のポリファーマシー※2や多剤併用は重要な課題です。小川 ポリファーマシーとは単に服用する薬剤数が多いことではなく、それに関連して薬物有害事象のリスク増加、服薬過誤、服薬アドヒアランス※3低下等の問題につながる状態と理解されています。こうしたポリファーマシーの評価や改善を図るとともに、骨粗鬆症の治療薬に関する評価や必要性を見直すことも大切だと思います。2. 何を手応えに治療を継続してもらうか

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