骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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24※4 2017年都道府県別骨粗鬆症検診実施率 平均62.2%(OPJリエゾン, 2020,冬, p.17)※5 定量的超音波測定法、主に踵骨(かかとの骨)を測定する※6 二重エネルギーX線吸収測定法、主に腰椎、大腿骨(腰、足の付け根)を測定する骨粗鬆症と共創社会三浦 骨粗鬆症検診についてお話しをお聞かせください。骨粗鬆症検診の目的は、骨量の低い人を見つけ、早期に治療を開始してもらうことで骨折を防ぎ、寝たきりなど要介護状態に陥るのを防ぐことですが、さらに経年変化を把握し、予防のための行動を起こしてもらうということで非常に重要です。ところが、実際には骨粗鬆症検診の受診率は低く、憂慮すべき事態と思いますがいかがでしょうか。石橋 受診率も平均5.4%ながら、骨粗鬆症検診を実施している自治体が全体の6割程度※4(2017年)で、実施率がそもそも低いことが指摘されています。以前、自治体の担当者に骨粗鬆症検診の件で直接お話しを伺ったことがありますが、検診の実効性の問題、つまり検診を実施しても効果が実感できないと話されていました。例えば、QUS(キューユーエス)※5で検診をして要精検になった人が、次に医療機関に行ってDXA(デキサ)※6で測定したら骨密度は低くなかったというケースも案外多いようです。まず技術面で検診の精度を上げ、スクリーニングの手法を確立することで、受診率を高めていくことも必要ではないかと思います。寺内 日本は比較的均質な社会ですが、検診の実施率や受診率が都道府県によって大きくばらついているということがまず驚きです。大きなばらつきがあるからこそ、検診率が高い自治体は要介護率が低いというきれいな相関がみられるのかもしれません。骨粗鬆症財団から検診率が高い自治体を表彰するなど行政側に何かモチベーションを与えて、全体の底上げを図ることはできないでしょうか。石橋 検診を受けた人がその後どこに行って精密検査を受ければいいのかはっきりと明示されていないことも課題のひとつです。内科の医師、整形外科の医師、すべてが骨粗鬆症に積極的かというと実際は温度差があります。専門的に骨粗鬆症を診る医師、骨粗鬆症の精密機器を持っている医療機関を登録医制度として見える化すれば、自治体担当者も案内しやすくなります。三浦 本来、骨粗鬆症の診断として使用されるのはQUSによる測定でなくDXAです。自治体の検診では簡易的な装置で測定しているので、正確に骨粗鬆症かどうかを知るには医療機関で測定する必要がある点を、今以上に啓発として進めることも必要です。小川 検診非実施の自治体は、財源やマンパワーの面で難しい可能性もあるかと思いますが、中には行政の担当者がとても意欲的な自治体もあります。 骨粗鬆症検診の更なる推進に向けて、行政への働きかけが一層大事になってくると思います。骨粗鬆症による骨折を減らせば要支援・要介護者の減少や健康寿命の延伸、医療経済的効果につながるといった知見の集積が期待されます。寺内 先ほど検診率が高い自治体を表彰したらと話しましたが、そのような意欲的に骨粗鬆症に取り組む自治体の検診実施状況、要精検者への対応、地域の医療機関との連携などをモデルケースとして確立し、発信できれば、他の自治体も追随してくるかもしれません。 また、骨折が少ない町あるいは村であることを、ふるさと納税のような町おこし要素に含めてアピールする機会が設けられれば、ひとつの材料になりそうです。3. どのように骨粗鬆症検診率を向上させるか

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