骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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25※7 萩野浩・阪本桂造・中村利孝:大腿骨頸部骨折の発生頻度および受傷状況に関する全国調査,    厚生科学研究費補助金長寿科学総合研究事業, 2002小川 骨の健康に効果的な地域の特産品や独自の取り組みを積極的に紹介することも大切だと思います。三浦 今後、骨粗鬆症の予防と治療をいかに社会の中で持続させていくことができるか、今後の展望や期待も含めお話しください。石橋 骨粗鬆症や骨折予防の重要性をさらに皆さんに知ってもらうため、別な側面から発信していく工夫をすることが大切です。例えば、誰も出来れば年は取りたくないですが、実は骨粗鬆症は見た目の若さにも影響するというようなことです。骨粗鬆症になって圧迫骨折が起きると背中が丸くなって急に年を取った感じになりますし、姿勢が悪くなると運動機能も衰えますから動きの活発さも失われます。その人自身の人生の持続可能性に骨粗鬆症の予防治療は非常に重要です。小川 骨粗鬆症の予防と治療の重要性を認識してもらうために、大腿骨などの骨折を起こしてしまった後の生活をイメージしてもらうことも、そのきっかけになると思います。骨粗鬆症による骨折を自分自身に起こりうるひとつの事象として意識することが大切でしょう。寺内 今後、もしマイナンバーと健康保険証が紐づけられるというようになると、恐らく個人の健康関連情報が一元化されていくということになると思います。遺伝の要素や10歳代、20歳代のときの食生活、月経歴などが情報に組み込まれることによって、将来の骨粗鬆症リスクが平均と比べて高いというようなことがわかれば早めに対策をとることが可能になるのでないかと思います。小川 AIの活用等も今後飛躍的に進展するでしょう。胸部X線やCTの画像などとAIを用いることで、骨粗鬆症診断に活用できるようになれば、一層、骨粗鬆症診療が広く身近に行われるようになると期待されます。石橋 医師と多職種の医療スタッフが相互に連携しながら実施する「骨粗鬆症リエゾンサービス」という取り組みがあります。認定資格を持ったコーディネーターを「骨粗鬆症マネージャー」と呼びますが、骨粗鬆症マネージャーが今、骨粗鬆症の予防と治療に積極的に取り組んでいます。彼らの働きが社会の中でどのような役割を果たしているか見えるようにしたい。社会の理解が得られ、そのうえで予防関連の活動に少しでも公費を投入してもらえるようになればもっと活躍の場が広がるはずです。小川 骨粗鬆症に対する予防や治療を行うことが医療経済的にも効果的であるという点も理解が広まると良いと思います。また、今後とも骨粗鬆症検診が全国的に広く普及される展開が期待され、骨粗鬆症の啓発、予防、診断、治療、ケアをはじめとする多くの面で骨粗鬆症財団の役割はますます重要になってくると思います。石橋 骨粗鬆症によって生じる介護や骨折に関する医療費は非常に高く、大腿骨頸部骨折の急性期のみの治療費に年間約1,300億円の医療費がかかっていると概算されています※7。骨粗鬆症の予防と治療を効果的に継続していくこと、それ自体がこの日本の人々と社会を持続可能にしていくための最大の鍵であると言えるのではないでしょうか。三浦 骨粗鬆症の予防と治療は、社会において共創していくことが大切であることが、座談会を通して良くわかりました。今後とも、わが国の健康寿命の延伸のために本財団の今後の活動に注力したいと思います。本日は、ありがとうございました。(令和3年7月25日 AP東京八重洲にて)4. 骨粗鬆症の予防と治療に関した持続可能な  社会の実現

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