骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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27 いま働く女性の4人に一人は更年期世代といわれ、各分野で活躍しています。更年期の心身の不調には科学的根拠のある健康情報と医療を賢く取り入れて、健やかに、さらに持てる力を十分に発揮しながらセカンドステージを歩み出しましょう。一般社団法人 女性の健康とメノポーズ協会 理事長三羽 良枝さん(みわ・よしえ) 公益財団法人骨粗鬆症財団様の設立30周年を心よりお祝い申し上げますと共に、今後の益々のご盛栄を心より祈念申し上げます。 当協会の「女性の健康電話相談」には、更年期を主とした女性の健康問題に関するご相談が絶えることなく届いています。当電話相談は協会設立2年後の1998年より開催し、更年期症状の悩みや対処法、職場や家庭での問題まで多様なご相談が全国から寄せられ、更年期を中心とした世代の女性の実情がオンタイムで把握されています。 更年期は45歳~55歳の10年間を指し、卵巣機能の低下で女性ホルモンの分泌が急減し「のぼせ、多汗、動悸、脂質異常、骨粗鬆症など」の身体的症状や「うつ気分、不安・イライラ感、無気力感など」の精神的症状が多様に起きやすい、女性の心身の大転換期です。 いま更年期世代女性の人口数は各世代の中で最多であり、就業率も8割近くに上り(総務省統計局2019年)、管理職を担う世代でもあります。しかし自身の更年期による不調に加えて職場の理解不足などで「降格を申し出る、キャリアを諦める」などのケースも見られ、当協会とNHKの共同企画「更年期と仕事に関する調査 2021年」からも、「仕事を辞めた・辞めたいと考えた」人が2割に及ぶ状況が確認されました。日本女性の管理職比率はG7の中で最下位であり、改善のためにも更年期の健康づくりは一層求められています。女性も男性も職場をはじめ広く社会的にも、科学的根拠に基づく女性特有の健康課題に関する知識と理解を持つことで、更年期症状・障害への対処と改善はもとよりパフォーマンスの向上や職場の環境づくりも図られ、当協会が進める「女性の健康経営®」の実践や国が取り組む女性活躍の推進にもつながると考えます。 更年期症状は、女性ホルモンの欠乏に環境的問題や本人の心理状態・気質が重なり生じるといわれ、自身のライフスタイルの見直しと共に女性ホルモンの視点を持った更年期医療を賢く取り入れることも必要でしょう。不調を一人で抱えずに婦人科・更年期外来を受診することで、自身のホルモン分泌の状況を知り、更年期症状の改善及び更年期以降の女性に起きやすい生活習慣病や骨粗鬆症・骨折の予防対策もでき、高齢期の健康寿命の延伸にもつながるでしょう。更年期症状・障害には、有効な治療法として世界的に使われている長期データに基づくホルモン補充療法(HRT)(ホルモン補充療法ガイドライン2017年度版〔公社〕日本産科婦人科学会発行)の他、漢方や骨の健康づくりのための薬剤や対処療法など選択肢があることを、是非多くの方々に知って頂きたいと思います。 女性特有の健康課題の知識と情報を得る一環として、当協会「女性の健康検定®」を女性・男性、職場単位でご活用頂き、働く女性のキャリアの実現や企業・団体による女性活躍サポート、また更年期世代の管理職の定着に役立てて頂き、社会全体で生涯を通した女性の健康づくり&活躍が進むことを期待いたしております。更年期を上手に過ごし、働いていくために知っておきたいこと

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