骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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く働への女性メッセージいっときいっとき29(公財)骨粗鬆症財団 元理事/日本女子大学名誉教授・顧問江澤 郁子(えざわ・いくこ)プロフィール医学博士(東京大学)。日本女子大学大学院家政学研究科修了。カルシウム・骨代謝研究で日本家政学会賞、日本栄養食糧学会賞などを受賞したほか、2001年には紫綬褒章(動物生理・代謝学研究)、2009年には瑞宝中綬章(教育研究功労)を受賞。「働く」とは収入を得ることだけを指すのではなく、家庭、地域社会、職場、学校など生活の場を通して、自身の目標や希望を叶えるため活動することです。人生100年時代、女性が明るく心豊かに働き続けていくためには、日頃の自己管理もまた大切です。そこで江澤郁子・元理事より働く女性へのメッセージをいただきました。江澤氏は1970年代からどんな食事や運動が骨によいのか研究と実験に打ち込まれ、その問題に取り組むために行った手法は現在、多くの研究分野で活用されています。働く女性へのメッセージわずか50年と言われた時代には、生活習慣病の問題が起きる前に平均寿命を迎えたため、骨粗鬆症は問題ではありませんでした。しかし人生100年時代の今日、様々な問題を抱えるようになりました。 骨粗鬆症による骨折は、車イス、寝たきり、要介護と生活の質(QOL)の低下につながるため、日頃からの骨粗鬆症の予防をはじめとする自己管理が極めて大切と言えます。 「体」という文字は、以前は「體」と書きました。つまり、豊かな骨づくりが体づくりの基本なのです。ところが現在の生活習慣、特に食生活は、いつでも、どこでも、何でも好きなように食べられるという飽食時代、食べることの大切さ、食べられることへの感謝の気持ちさえ忘れられるようになり、偏食、欠食、やせ志向、過食などと、食生活に大きな乱れを生じ、健康にも大きな影響を与えています。特に高齢者では食が細くなり、食品の選択や栄養素が偏るなどの低栄養による虚弱化が課題となっています。 一方、生活に必要なものは、体を動かすことなく何でもインターネットひとつで注文から手元に届くという便利な生活が当たり前の時代となっています。その結果、生活活動量が減り、エネルギー消費量も減少するため、エネルギー摂取量と消費量のバランスが崩れ、肥満や体力低下などが問題となっています。健康な体を維持・増進するためには、まず栄養バランスの取れた(摂取する食品の種類や、食品に含まれる栄養素のたんぱく質、脂質、糖質、ミネラル、ビタミン、食物繊維などの)適量の食品を摂取することが大切です。さらに忙しい日常生活の中でもできるだけこまめに体を動かすような生活習慣を身につけることも大切です。女性の一人として精一杯取り組んできた者の一例として自分自身の生き方を書かせていただきました。「朝は希望に起き、昼は努力に生き、夜は感謝に眠る」、これは私の座右の銘の一つです。私自身、現在まさに後期高齢期の真直中の88歳、残る人生をいかに生きるか、一日一日、一かに年齢相応に体力の衰えは感じています。しかし「人間一生勉強、成長もする」という気力で、希望の光を持ち続け、焦らず、諦めず一歩一歩前を向いて歩んでいきたいと心がけています。 しかし長い人生の間には様々なことがありました。幾度もの大病や難題にもぶつかり、その都度、これを試練と受け止め「神様は乗り越えられない試練は与えない」という言葉を胸に、何事にも一生懸命取り組み乗り越えてきました。「わが人生に悔いなし」と言える今日です。 私の生きる姿勢は幼い頃からの両親の後ろ姿や恩師との出会い、母校の建学の精神「信念徹底、自発創生、共同奉仕」などにより培われてきたものと感謝するばかりです。さらに、この今があることは多くの人々の理解や協力があってこそのことと感謝の日々でもあります。 与えられた人生を大切に遅々たる歩みでも一歩一歩精一杯歩んでいきたいと思っています。が極めて大切に思える毎日です。確時一時現代人の生活習慣の問題点 骨粗鬆症は生活習慣病の代表と言えます。かつて人生気力・体力・精神力そして感謝 今回、この骨粗鬆症財団設立30周年に寄せて、働く

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