骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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3東京都健康長寿医療センター 名誉院長公益財団法人骨粗鬆症財団 理事長 1991年9月に骨粗鬆症財団が正式に発足してから30周年を迎えました。この30年、骨粗鬆症財団は、国民保健の向上及び老人福祉の増進に寄与することを目的に、3つの公益目的事業(普及啓発/研究助成/調査研究)を継続的に実施して参りました。その結果、近年、骨粗鬆症に対する社会的関心は大きく高まっています。骨粗鬆症のような生活習慣病はその名が示すとおり、成人期からの不適切な生活習慣が主要な発症原因であるため、現在解明されている疾患の危険因子を積極的に取り除くこと、つまり生活習慣を改善することで予防あるいは発症を遅らせることが可能です。骨粗鬆症財団の使命は、こうした骨粗鬆症についての最新情報を一般の皆様にわかりやすく正確に伝え、この疾患に正しく対応できるようにする「普及啓発事業」にあるとして、精力的に実施して参りました。 例えば、市民啓発の組織として「骨を守る会」があります。1999年に設立された「東京骨を守る会」をはじめとして、2021年現在、14の団体が日本の各都市において自主的な活動を行っており、骨粗鬆症財団ではこれらのサポートを行っています。また、地球規模で活動する組織として国際骨粗鬆症財団(IOF)がありますが、骨粗鬆症財団は、IOFの当時の理事長であったP.Delmas教授からの要請を受け、1998年の設立時より加盟団体として参画し、さらに4年毎の選挙では「アジア・パシフィック」地域において選出される理事(Board Member)を輩出しています。毎年10月20日の「世界骨粗鬆症デー(WOD)」には、IOF発の世界統一スローガンのもと、世界各地でキャンペーンが展開されており、骨粗鬆症財団も市民公開講座や骨量測定体験会をはじめとしたイベントを実施し、現在、WODは骨の健康に注目する特別な一日と、徐々に世間に浸透しつつあります。 「普及啓発事業」以外に、骨粗鬆症に関連する基礎的・臨床的研究へ研究費を助成する「研究助成事業」は1993年より実施し、2021年には助成金額が4億円に達しました。「調査研究事業」としては、日本における「大腿骨近位部骨折の発生頻度に関する研究」を30年にわたって実施しており、骨粗鬆症の普及啓発に必要なエビデンスを創出しております。 日本は世界屈指の長寿国となりましたが、現在では、年齢という単に数字の上での長寿は決して高齢者の福祉に結びつくものではなく、自立して生活できる期間(健康寿命)をできるだけ伸ばすことに重点を置くべきだ、ということが明らかになっています。ところが、残念なことに、目下骨粗鬆症がもたらす骨折の危険性を知る最良の方法である骨量測定者がまだまだ少ないのが現状です。 骨粗鬆症は高齢者に多発し、様々な障害をもたらす疾患であり、発症予防が極めて重要であることに違いありません。本財団の活動を支えるのは何よりも国民の皆様の健康と幸福であり、骨粗鬆症財団は与えられた課題を今後も忠実に果たしていきたいと考えています。設立30周年記念誌発刊にあたって折茂 肇

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