骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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4公益財団法人骨粗鬆症財団副理事長産業医科大学 名誉教授安田女子大学 薬学部 薬学科 教授公益財団法人骨粗鬆症財団副理事長理事長・副理事長 ご挨拶 骨粗鬆症財団30周年お慶び申し上げます。骨粗鬆症財団は、骨粗鬆症・骨折の知識の普及・予防に長年にわたって取り組んでいます。わが国では、平成14年(2002年)に骨粗鬆症検診が開始され、財団は「骨粗鬆症の検診・保健指導マニュアル」作成や、年毎に検診状況の集計などを行ってきました。しかし、残念ながら、現状は、検診実施率は67%で自治体の1/3は検診を実施しておらず、検診受診率はわずか5%です。近年、骨粗鬆症に対する理解は進んだとはいえ、この数値は開始当時からほとんど変わらず、自治体、住民ともに骨粗鬆症検診に関心が低い状態が続いています。その要因の1つとして、骨粗鬆症の結果として起こる骨折が、高齢者の活動性や生活の質を損ない、要介護状態に繋がること、その予防対策の一環としての検診の重要性が、まだまだ十分に認識されていないことが挙げられます。 これからの財団の役割として、住民だけでなく自治体に対しても、骨折・要介護予防を見据えた骨粗鬆症、骨折予防と検診率向上のために積極的に情報を発信し、国民全体の骨粗鬆症・骨折への理解を深め、健康長寿社会を達成する一翼を担うことをめざします。 骨粗鬆症が骨折の危険性を増加させる生活習慣病であり、薬物療法を中心とした治療により骨折を予防できる事は、世の中に広く認められてきました。今から考えますと信じられないかも知れませんが、財団の発足当時は、「骨粗鬆症は老化における生体の適応状態の一つで、治療は必要ない」という考えを持つ方もおられた時代でした。 このような状況の中で、財団は常に、「骨の健康」と「骨折予防」の重要性について、科学的かつ客観的な事実を、易しく分かりやすい形で世の中に伝え、若手研究者の育成と普及活動への支援を続けてきました。実際、この30年、骨粗鬆症の認知度は向上し、骨折予防の重要性と治療薬の効果についての理解は普及してきました。 これからの10年、わが国は「人生100年時代」を迎えます。男女とも、人生のほぼ半分の期間を骨折の危険性が増加した状態で過ごすことになります。若い世代の人々を含めて、広く世の中全体で、骨折の予防に取り組んでいかなければなりません。この30年、「骨の健康維持と骨折予防」を推進してきた、財団の役割は、益々、重要になってくるものと思います。骨粗鬆症検診の現状と検診率向上のため財団の果たす役割骨の健康と骨折予防のため今後10年において財団が果たす役割中村 利孝藤原 佐枝子

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