骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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や6カル私たちとカルシウム通しやすい火山灰の土壌が多く、カルシウムなどのミネラルが雨水から溶け出る前に川へ流れ込んでしまうことが軟水である理由のひとつです。現代の日本の食生活は豊かになりましたが、和食に乳製品を食べる習慣がないこともあり、意識的にカルシウムを摂ろうとせずに普通の食事をしているかぎり日本人はカルシウムが常に不足している状態となります。在する以外の1%は血液の中にあります。血液中のカルシウムは副甲状腺から分泌されるホルモンの働きによって常に決まった濃度に保たれ、全身の機能を正常に保つ役割を果たしています。実はカルシウムの役割の中で最も重要なのは人体に約40兆個あるといわれる各細胞へ情報を伝達する機能です。筋肉が収縮したり心臓が規則正しく拍動したりするためには血液中のカルシウムが一定の濃度である必要があり、血液中のカルシウムが不足すると心臓や脳を働かせるための情報が伝わらなくなって脈が乱れたり、筋肉が痙攣したりすることがあります。そのため血液中のカルシウム濃度が低下すると骨からカルシウムが溶け出して不足分を補い、心臓が止まるのを防ぎます。ホルモンの分泌が増え血液中のカルシウム濃度を回復しようとするため、骨から血液中へカルシウムの溶け出しが過剰になります。骨からどんどんカルシウムが奪われるため、その結果、骨がもろくなる骨粗鬆症の危険性が高くなります。 一方、副甲状腺ホルモンの強い働きにより骨から余剰にあふれ出たカルシウムは脳や心臓、腎臓、肝臓などあらゆる細胞内で増加します。血管の壁にある平滑筋に貼りついてしまうと血管が収縮して狭くなります。そこへ血液を通そうとより強い圧力で心臓から血液が送られてくるため高血圧が起こります。また、血管にカルシウムが沈着することにより、血管が狭くなり動脈硬化を発症します。骨粗鬆症の人で心筋梗塞を発症する人が多いのも、心臓や脳に血液を送る血管が動脈硬化を起こし詰まった結果起こるからです。細胞が正常に機能するためには細胞内に余分なカルシウムがない状態であることが必要なのです。 このようにカルシウムが不足すると骨粗鬆症だけでなく、高血圧や動脈硬化など様々な病気にかかりやすくなることをご理解いただけましたでしょうか。できるほど古くからあった病気ですが近年になって骨粗鬆症が注目され始めた背景には、人間の寿命が長くなったことが深く関係しています。骨は体を動かすことに関係する筋肉や関節など運動器全体の健康に直結します。カルシウムが豊富な健康な骨をつくることは、自立した生活を可能にし、また各種の生活習慣病を予防するのに役立ちます。 カルシウムだけで様々な病気を完全に避けることは難しいですが、ぜひカルシウムを毎日の生活に意識して取り入れ、人生を軽かに生きていきたいですね。生命維持に直結しているカルシウム カルシウムというとまず骨を連想しますが、骨と歯に存万病を起こすカルシウム不足 カルシウムが不足した状態が慢性化すると、副甲状腺ヒトは骨と共に老いる さて、骨粗鬆症は古代エジプト人の骨にも見ることが

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