骨粗鬆症財団設立30周年記念誌 OSTEOPOROSIS
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7プロフィール日本女子大学食物学科、新潟医療福祉大学健康栄養学科、帝京平成大学健康栄養学科を経て現在に至る。20期(2006年)から24期(2019年)まで日本学術会議連携会員として活動。著書に「骨粗鬆症のすべて」(共著、南江堂)、「好きになる栄養学」(編著、講談社)など。 カルシウムは私たちの体にとって生命維持を司る大切な栄養素ですが、体内でつくることができないため、毎日の食事から十分量摂取することが極めて大切です。しかし、近年の国民健康・栄養調査報告を見ると20歳以上の女性の一日のカルシウム平均摂取量は500mg程度を示し厚生労働省が推奨する650mg(75歳以上の推奨量は600mg)にも遠く達していない状況です。日本人の食生活では毎日意識しないと十分量のカルシウムを摂取することは大変です。また、残念なことにカルシウムは吸収率が低い栄養素のひとつで、食事から摂取した分が全てそのまま体内に吸収され利用されるわけではありません。 体内でのカルシウムの吸収にはビタミンDが深く関わっています。日光にあたると紫外線により皮膚でビタミンDがつくられ、肝臓で一部、腎臓で完全に代謝されて活性型ビタミンDとなりカルシウムの吸収を促進します。適度に日光にあたることを避けると皮下でのビタミンD生成が低下するためカルシウムをたくさん摂っても十分吸収されません。さらに加齢とともに胃酸の分泌が悪くなり腸の働きが衰えてカルシウムが吸収されにくくなることが知られています。 カルシウムを上手に摂るには、カルシウムを含む食品を一度にたくさん食べるより、カルシウムを多く含む様々な種類の食品(乳製品、大豆製品、小魚、緑黄色野菜など)を毎日3度の食事に1品ずつでも食べること、ビタミンDの助けを借りて腸管からのカルシウム吸収量を維持することが重要です。即席麵やスナック菓子、(公財)骨粗鬆症財団 理事塚原 典子炭酸飲料に多く含まれるリンはカルシウムの吸収を妨げます。 偏った食品や献立を避け、毎食、主食・主菜・副菜を揃え、様々な種類の食品を摂取して栄養バランスの良い食事を心がけることが大切です。 ここで、カルシウムを上手に摂るアイデアを1つ。カルシウムを多く含む食品の中で、保存できる食品(スキムミルク、高野豆腐、切り干し大根、素干し桜エビ、干しひじき、水煮大豆や鯖の缶詰など)や冷凍できる食品(茹でたほうれん草、小松菜、いわしの丸干しなど)をストックしておき、毎日の食事の食材として利活用することでカルシウムアップが期待できます。 一日に推奨されるカルシウムの量は年齢性別で異なりますが、より高い骨量を得て骨粗鬆症を予防するには毎日食品から700~800mg(骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン推奨量)摂るのが望ましいとされています。食事から摂ることを前提として、カルシウムを十分に摂取できないときは補助的にサプリメントや機能性食品に頼ることがあってもいいでしょう。ただし薬との併用については必ず医師や薬剤師に相談してください。 カルシウムの吸収率現代の女性はカルシウム不足カルシウムを上手に摂るにはカルシウムの上手な摂り方

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