質問をクリックすると回答に移動します。
- Q1
- 「85歳の骨」と言われましたが、本当でしょうか
- Q2
- 骨粗鬆症の予防法はよく聞きますが、実際に骨粗鬆症になってしまったらどのように治療するのですか
- Q3
- 骨粗鬆症になると手術が必要なのですか
- Q4
- 骨粗鬆症が原因の腰痛の治療について
- Q5
- 背骨がつぶれている場合の運動について
- Q6
- くしゃみがきっかけで骨折をおこしてしまいました
- Q7
- 卵巣摘出と骨粗鬆症について
- Q8
- ホルモン補充療法について
- Q9
- リウマチと骨粗鬆症の治療について
- Q10
- 背骨の骨セメント注入について
- Q11
- アレンドロネートをのんでいますが改善効果がみられません
- Q12
- 痛みがひどいためブロック療法を受けたいのですが
- Q13
- 介護老人福祉施設に入所している母親に骨粗鬆症の治療を受けさせてあげたいのですが
- Q14
- 椎間板ヘルニアが骨粗鬆症の原因になるとききましたが
- Q1
- 「85歳の骨」と言われましたが、本当でしょうか
腰痛で病院へ行き、骨密度を測ってもったところ、「85歳の骨」と言われ、とてもショックを受けています。そんなことが本当にあるのでしょうか (59歳、主婦)
骨量を評価する際に80歳相当とか100歳相当という表現がよく使われますが、あまり良い表現ではありません。心理的に患者さんが受けられるショックが大きいからです。また、たとえば、同じ80歳でも、骨量の多い人と少ない人では骨量にかなりの差があるため、年代別の平均値だけで比較しても意味がありません。
日本骨代謝学会が定めた評価法では、若年平均値(20~44歳の平均骨量)の70%未満が骨粗鬆症となります。診療の現場では、50~60%の方をよく見かけますし、ときには40%代の方もいらっしゃいます。ですから、あまり落ち込まないでください。
DXA(デキサ)法という骨量測定の方法で精密検査をお受けになり、病院で総合的に診断してもらってください。
- Q2
- 骨粗鬆症の予防法はよく聞きますが、実際に骨粗鬆症になってしまったらどのように治療するのですか
骨粗鬆症の治療薬としては、ビスフォスフォネート、ラロキシフェン、 活性型ビタミンD3、カルシトニン、ビタミンK2、 イプリフラボン、カルシウム剤などがあります。これらの薬は、吸収される骨量を少なくしたり、新しくつくられる骨量を増やしたりする働きがあり、骨粗鬆症治療に有効な薬物として広く使われています。
また、カルシウムの多い食品をとったり、毎日こまめに運動して骨に負荷をかけ、適度な日光浴でビタミンDを補充するなど、予防に有効な方法は治療効果を促進し、丈夫な骨を作るための基本です。
人間の骨は、容易には骨折しない構造となっています。ところが、骨粗鬆症にかかると、壁に手をついたり、物を持ち上げるなど、ちょっとしたことで骨折することがあり、その場合には外科的な処置をとる必要があります。また、転んで大腿部頸部などを折ってしまった場合などは、骨を固定するための手術が必要になります。
しかし、骨粗鬆症自体は薬や食事療法、運動療法などで治療が可能な病気です。治療中は転ばないように杖を使ったり、家の中でもなるべく段差を少なくして、手すりをつけるなどの工夫をして骨折を防げば、手術をすることはありません。
- Q4
- 骨粗鬆症が原因の腰痛の治療について
86歳の祖母が腰痛のため、病院に行ったところ「骨粗鬆症にともなう痛み」と診断され、痛み止めを処方されました。しかし痛みが激しいようで、1日3回の薬もそれほど効いていないようです。対策としてカイロなどで暖めたり、部屋の温度を上げたりしていますが、なかなか良くなりません。寝床でも痛むようで、とても辛そうです。痛みを和らげる効果的な方法があれば教えて下さい。(31歳、女性、会社員)
まず病状から推測して、骨粗鬆症による慢性的な腰痛に加えて新しく骨折が起こり、激しい痛みが生じたと考えられます。骨粗鬆症による脊椎骨折は骨量の低下とともに増加し、5個以上の脊椎が骨折することも珍しくありません。
骨粗鬆症にかかると、強い外力がなくても骨折が起こります。背骨は骨折するたびに圧迫変形を起こして、次第に背中が円くなります。長期間経過をみると、骨折を起こしたときはしばらく激しい痛みがありますが、骨折が治るとともに激しい痛みは消え、慢性的な痛みとなっていきます。
骨折による急性の激しい痛みの主な原因は、起きあがったり、寝返りなどの動作により骨折部が動くからです。したがって、骨折部を動かないようにすれば痛みは半減します。病院に入院して治療を受けられるのが一番良いのですが、家庭で治療されるようでしたら、サラシを一反買ってきて、胴巻きのように巻いてあげられたらいかがでしょうか。
また、起きあがるときには前後に起きないで、身体をいったん横にしてから、横向きに起きあがると痛みが少ないと思います。もちろん、座薬や湿布などの鎮痛剤は必要ですが、身体を冷やすのは良くありませんので、部屋の温度を上げることも重要です。
骨折は高齢でも次第に硬くなり治っていきます。以上は骨粗鬆症による脊椎骨折の場合ですが、あまり痛みが強く、良くならないときには癌の骨転位などほかの原因も考えなければなりませんから、充分に診察してもらって下さい。
- Q5
- 背骨がつぶれている場合の運動について
私の母が今年の春に骨粗しょう症と診断されました。姿勢が悪くなっていたのが心配で、プールで歩く運動を勧めたばかりでしたが、背骨が潰れているので、運動はやめておくように指導されたそうです。負担の軽い運動があれば教えてください。(37歳、主婦)
骨粗鬆症患者さんの運動量は病気の進行度により違います。骨の減少が軽度で、脊椎が骨折していない場合は、運動で筋肉と骨が増強できます。しかし、骨量減少が高度で、すでに脊椎が骨折を起こしている女性の場合は、気をつけて運動しなければなりません。ご質問の文面からするとお母さんはすでに脊椎骨折があるようです。
骨粗鬆症の女性で、脊椎骨折がある方と、脊椎骨折のない方で、新しく骨折を起す危険度を比較すると、脊椎骨折が一個でもある方の骨折危険度は、骨折のない方の2~3倍です。すなわち、脊椎に骨折があると、第2、第3の骨折を起こしやすいわけです。脊椎骨折のある骨粗鬆症患者さんの運動の基本は、
(1)まず体重の負担のかからない運動から始めます。椅子に座って背筋を伸ばす運動と膝をゆっくり伸ばす運動を10~20回、朝夕2回ずつされることをお勧めします。脊椎に負荷を加えないで筋力をつけることが必要です。ヒトの身体で歳を取ってまず弱くなるのは、背を伸ばす筋肉と膝を伸ばす筋肉だからです。
(2)次に、一般道を、万歩計をつけて3000~5000歩程度の少ない歩数から始めて、計画を立てて歩数を増やし、プールでの運動へと進めて行かれることをお勧めします。お母様の場合にはX線撮影、骨密度測定により骨粗鬆症の正確な診断をし、薬物投与を受けながら、ドクターから運動指導をお受けになるのが良いと思います。
- Q6
- くしゃみがきっかけで骨折をおこしてしまいました
くしゃみがきっかけで、乳房下部に痛みが走るようになりました。整形外科の診断で、骨粗鬆症がかなり進んでおり、X線には写らないが、骨にヒビが入って痛むのだろうとのことで、湿布貼付を続けています。コルセットは着けていますが、背中が曲がっているのであたってあまり具合がよくありません。痛みが和らいで家事など始めると、胸に「ピッ」という音とともに、また、もとの痛みが始まるような状態を続けていましたが、うっかり電動マッサージを背中にかけてしまいました。その時は気持ちがよかったのですが、翌日から胸部全体が痛くなり、現在は姿勢をかえることもできないほどになりました。この様な状態になった場合の治療方法を教えてください。(82歳、主婦)
まず骨粗鬆症による高齢者の肋骨骨折についてお答えします。くしゃみや咳で肋骨骨折が起こることは珍しくありません。肋骨は骨が薄く、しかも一部は軟骨ですから、折れていてもしばしばX線に写らないことがあります。したがって、X線に写らないから骨折が軽症だとは必ずしも言えません。しかし、肋骨骨折はいくら高齢者の方でも、2カ月程度で痛みがとれて治るのが普通です。
ご高齢ですので、肋骨骨折の治癒に日数がかかっていたところに、再度外力が加わって再骨折が起こったか、あるいは別の部位に新しく肋骨骨折の起こったことが考えられます。胸に「ピッ」と轢音がしたようですから、骨折にほぼ間違いないと思います。骨粗鬆症で骨が脆くなっている場合にはこのようなことが起こります。電気マッサージは良くなかったようです。
さらに、胸全体の痛みは肺に何か病変が起こっていることが示唆されますので、早急に整形外科単科の医院ではなく、呼吸器専門の医師のいる総合病院で、肺に異常のないことを確認してもらってください。
治療については肺に異常がなく、単なる肋骨骨折であれば、肋骨固定バンドを正しく装着して、骨折を起こした側の胸の動きを抑制して経過をみます。痛みに対しては内服あるいは座薬の鎮痛剤を使用します。肋骨は呼吸の度に動きますので、痛みがなかなか取れない場合もありますが、物を持ち上げたりなどの上肢の動きを制限する程度で、一日中ベッドの上で安静をとる必要はありません。肋骨骨折が多発する場合には他の疾患も考えなければなりませんので、骨量測定のできる別の病院を受診されて、セカンドオピニオンをお聞きになることも大切です。
- Q7
- 卵巣摘出と骨粗鬆症について
12年前に卵巣と子宮を摘出しました。かかとの骨で骨密度を検査したところ、骨粗鬆症と診断されました。その後、腰椎と脊椎の圧迫骨折で1か月入院し、現在も治療中です。仕事に復帰したいのですが、大丈夫でしょうか。(42歳、主婦)
卵巣・子宮全摘術を受けておられますので、骨粗鬆症はそのために起こったものですから、「人工閉経による骨粗鬆症」といいます。まだ42歳でお若いですから、普通なら閉経前で骨粗鬆症が発症しない年齢です。圧迫骨折があり、入院までしておられたようですから、骨の粗鬆化の程度を把握するためにもう一度精査をお受けになることをお勧めします。
(1)骨密度の評価ですが、かかとの骨の測定のみでは充分な骨量減少の評価ができません。やはり、DXA(デキサ)と呼ばれる測定方法で、腰椎の骨密度を測定することが必要です。
(2)次に、血液、尿の検査で「骨代謝マーカー」を測定してもらって下さい。簡単に測定できますし、保健が適用されます。特に若い方では、この値から骨の代謝状態を知ることが大切で、治療効果の判定も可能です。
まだお若いですから、よく精査をお受けになり仕事に復帰してください。
- Q8
- ホルモン補充療法について
3ヶ月前から女性ホルモンによる治療を受けていますが、ホルモン治療に危険はないのでしょうか。(32歳、主婦)
マスメディアでも紹介されましたが、昨年、米国での健康閉経後女性を対象にしたホルモン補充療法(HRT)の臨床試験(WHI:Women’s Health Initiative)が予定よりも早く中止されました。
これはエストロゲン(女性ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を併用して5年以上投与したところ、乳癌の発生率が有意に増加したためです。4年目までは、乳癌の発生率は女性ホルモンを使用しなかったケースと同じでした。
一方、HRTによる、椎体や大腿骨の骨折予防効果もこの臨床試験で初めて明らかになりました。更年期症状がある場合もホルモン補充療法は有効で、長期間(5年以上)使わなければ問題はありません。さらに女性ホルモンを服用している間は頻繁に乳癌を検査をしますので、HRTを受けている人はかえって乳癌の早期発見が可能となり、乳癌で亡くなる人の数は少ないといわれています。
- Q9
- リウマチと骨粗鬆症の治療について
私の父は関節リウマチで、自宅療養を行っています。自分の力で起き上がることは可能ですが、長距離の歩行はできません。先日、病院で「骨がすかすかになっている」と診断されました。リウマチの薬の副作用も関係していると思いますが、どうしたら良いのでしょうか。また、リウマチ患者でも可能な運動があれば教えてください。(23歳、女性、学生)
リウマチによる骨粗鬆症には2つの病態が考えられます。
(1)関節の炎症による関節周囲骨の粗鬆化 手足の関節を中心に起こります。さらに関節炎が進行し、痛みが強くなると関節を動かさなくなくなるため、「不用性の骨の萎縮」が重複します。この場合、抗リウマチ剤投与により、関節の炎症が軽快すると骨粗鬆症も改善します。
(2)リウマチ治療のために使用されるステロイド剤(グルココルチコイド剤)誘発の骨粗鬆化 リウマチの治療にしばしば用いられる「プレドニゾロン」などのステロイド剤(グルココルチコイド剤)は、抗炎症作用が強くひじょうに有効です。しかし大量に投与すると副作用として全身性の骨粗鬆症が誘発され、内服されたステロイド剤の総量に応じて、脊椎をはじめとする全身性の骨粗鬆化が進行するといわれています。
お父様は全身性の骨粗鬆化の可能性がありますので、DXA法で脊椎の骨密度を測定して、現在の骨粗鬆症の程度を診断してもらってください。骨粗鬆症で骨密度が低下し、骨がもろくなると、体のいろいろな部位が骨折しやすくなります。リウマチの検査の他に、脊椎、四肢の骨密度測定、骨代謝マーカーの測定などの骨粗鬆症に関する検査をお受けになり、骨粗鬆症が合併している場合には治療が必要となります。
治療に関しては、リウマチの治療と骨粗鬆症の治療を総合的に受けてください。抗リウマチ剤は近年急速な進歩を遂げておりますし、リウマチに合併した骨粗鬆症治療の研究も進み、新しい薬が開発されています。また、整形外科では人工関節の手術も広く行われるようになりました。運動などのリハビリテーションも必要ですが、骨粗鬆症の程度と、関節拘縮の状態をよく把握したうえで行ってください。
- Q10
- 背骨の骨セメント注入について
10年前に背骨が圧迫骨折して、自然治癒しましたが、最近、また腰と胸椎が痛んできました。圧迫骨折が再発したのだと思いますが、現在は背骨にセメントを流して固める治療法があるとききました。後遺症や手術のリスクはないのでしょうか(56歳、女性、教育関係)
一般に骨粗鬆症による圧迫骨折は、脊椎椎体が楔状(くさび型)の変形を残したまま固まって治癒しますが、変形した椎体が神経を圧迫したり、脊椎骨折の治癒が遷延して異常な動きがある場合は、遅発性の脊髄神経症状をきたすことがあります。このような場合は、1.骨移植を行って脊椎を直接金属プレートで固定する手術方法と、2.リン酸カルシウム骨セメントを注入する手術方法があります。
【特徴】
●手術1:直接固定する方法は直視下で行なうため確実ですが、手術が大きいため、熟練した脊椎専門医の執刀が必要です。
●手術2:骨セメントの流入では背中を切開しますが、手術1よりも手術侵襲は少ないのが特徴です。近年、徐々に普及してきた方法ですが、現在は比較的限られた病院でのみ行われており、整形外科医が誰でもできる技術ではありません。
【リスク】
●手術1:手術が比較的大きく、輸血が必要なこともありますので、リスクの高い手術です
●手術2:前者と違って出血も少ないので、手術そのもののリスクは高くありません。しかし、使用するリン酸カルシウム骨セメントはペースト状で柔らかい状態で注入し、骨に入ってから固まりますので、骨セメントが骨以外の所に漏れて固まり、神経を圧迫する可能性があります。神経が圧迫されれば後遺症が出ることも考えられます
まだ56歳でお若いですから、十分手術の説明を受けてから決めてください。
- Q11
- アレンドロネートをのんでいますが改善効果がみられません
去年の検診で骨密度が少なかったため、医師から「アレンドロネート」(ビスフォスフォネート)を服用するよう指示されました。8カ月間飲み続けて、先日詳しく検査したところ、まったく改善効果がありませんでしたが、現在も飲み続けるように言われています。日頃から、食事、運動には気をつけています。医師に「転んだら骨折して寝たきりですよ」と言われて毎日不安です。何かアドバイスを頂けませんでしょうか?(66歳、主婦)
アレンドロネートをのんでも効果がない場合は、以下の可能性が考えられます。
アレンドロネートの効果は背骨の骨量か、大腿骨(足の付け根)の骨量で判定できます。手首の骨量を測った場合はほとんど変動しません。背骨または大腿骨の骨量が測定できる施設を探して、数回測定してください。
上記の方法が難しい場合は、尿や血液検査で効果を確認することもできます。アレンドロネートは骨が溶け出すのをとめる薬なので、血液や尿に含まれる骨の溶解産物を測定すると効果が判定できます。
治療前の検査値との比較が必要なので、すでに治療が始まっている場合は検査値の変動による効果判定はできませんが、たとえば尿中の「NTx」という物質(骨が解けるときに出る物質)が20~30nM/mMCrという値であれば効果があると判断してもさしつかえないと思います。主治医の先生に一度尿検査を頼んでみてはいかがでしょうか。
アレンドロネートはとても有効率が高い薬で、日本人の骨粗鬆症患者の約80%に有効であると考えられています。効果がなかった患者さんは、多くの場合、服用方法が正しくないことが知られています。以下の点を再度チェックしてみてください。
(イ)朝おきてすぐ(朝食前30分)にコップ一杯のお水で飲んでいますか?
(ロ)アレンドロネートをおのみになった直後に牛乳を飲んでいませんか? 牛乳はアレンドロネートの腸からの吸収をとめるはたらきがあります。
(ハ)アレンドロネートをのんだ後で、すぐに粉薬の胃薬などをお飲みになっていませんか? 散薬の胃薬はアレンドロネートの吸収をとめることがあります。
骨粗鬆症の合併症は骨折ですから、医師はそれぞれの患者さんに合わせて、骨折の発生を予防するお薬を処方します。しかし、実際に薬の効果を判断するまでに 1年ほどかかってしまうこともあります。その間、できるだけ転倒しないように注意してください。骨の状態が悪くても、転倒しない限りはそう簡単に折れるものではありません。また、折れたからといってすべての方が寝たきりになるわけでもありません。あまり心配しないで、いろいろな検査を試されてみてはいかがでしょうか。
- Q12
- 痛みがひどいためブロック療法を受けたいのですが
母(82歳)が胸椎の圧迫骨折で入院し、現在は退院して自宅で療養しています。できるだけ歩行をするよう指示を受けていますが、腹部と腰部の痛みがひどいため、歩行訓練を行えません。現在では、左腰骨の上下に激痛を訴えて、起きることもできません。レントゲン検査では、痛みを訴えている部位の骨に異常はないとのことでした。骨粗鬆症は痛みが次から次へといろいろな部位に出るものなのでしょうか。痛み止めも徐々に効かなくなってきているようです。今後の対応策を教えてください。神経のブロック療法は効果がありますか?(65歳、男、会社員)
骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折の痛みは、骨折部のみに限りません。脊椎は胸部に12個、腰部に5個ありますが、それぞれの場所で脊髄から左右に肋間神経と脊髄神経が枝を出して、胸壁、腹壁、臀部まで分布しています。
脊椎が圧迫骨折をおこして背骨が変形し、肋間神経や脊髄神経が圧迫されると、骨折部に加えて胸部や腹部にも痛みが放散します。腰骨(腸骨)部の痛みも多分それが原因です。放散痛は脊椎の骨折が治っても、高度の変形が残っていたり、骨折の治癒が遷延して骨折部が不安定な場合には痛みが継続します。
まず、痛みに対してはブロック療法が有効ですから、整形外科かペインクリニックの先生に相談してください。痛みに加えて、麻痺のある場合には手術の対象になることもあります。痛みのために歩行訓練ができないようですが、さらし布を腰に巻きつける方法もあります。コルセットが硬くて装着できない場合は有効な方法です。背骨の固定で痛みが軽減すれば、老人車で少しずつ歩くことができるかもしれません。
今後の対応ですが、文面から推察いたしますとお母様は重症骨粗鬆症の範疇に属します。したがって、圧迫骨折をおこしている背骨の場所と数、骨折部の治癒の状態、骨密度などを精査して、現在の状態を正確に把握して対策を立てる必要があります。寝たきりにならないためには、さらなる脊椎骨折の予防と同時に、背部と下肢筋力を増強することが大切です。最近は骨折予防の良い薬が処方できるようになりました。一度他の病院を受診されて、セカンドオピニオンを求められてはいかがでしょうか。
- Q13
- 介護老人福祉施設に入所している母親に骨粗鬆症の治療を受けさせてあげたいのですが
介護老人福祉施設に入った79歳の母親が骨粗鬆症で骨折し、とても痛がっています。施設では治療が受けられず、本人は「置いてもらっているのだから滅多なことは言えない」と言っていますが、どうしたら良いのでしょうか(32歳、男、会社員)
高齢者が痛みを訴えて、動けない姿を見ているのはとてもつらいことと思います。一般的に、「介護老人福祉施設」は病院ではありませんので、じゅうぶんな骨密度の評価はできません。まずは骨ドックや骨粗鬆症検診が可能な病院で、骨密度を測定してください。現在は骨密度を増加させる内服薬がありますから、検査と治療で骨密度を回復させながら、患者さんに合ったリハビリによって新たな骨折を防ぐことが重要です。
お母様は「施設に置いてもらっている」と思って弱気になり、「自分で動く」という意欲が乏しくなっているようです。周囲の協力により、転倒しそうになったらいつでも抱き起こせるような状態で、少しずつ歩きながら転倒に対する恐怖感を取り除き、日常生活の活動性を上げられれば良いのですが。病院や保健所で開催されている「転倒予防教室」に参加すれば、転倒の対策や知識も得られます。
- Q14
- 椎間板ヘルニアが骨粗鬆症の原因になるとききましたが
数年前に椎間板ヘルニアになって以来、ちょっとした衝撃でぎっくり腰になってしまうことが多くなりました。先日、「ヘルニアが骨粗鬆症の原因になる」とききましたが、ダイエットで急激に痩せたり、お菓子だけで食事をとらずに過ごすなど、不規則な食生活を送っていたため心配です。整形外科で腰のレントゲンや MRIの検査を受けたのですが、他にも検査を受けた方が良いのでしょうか。(26歳、女性、会社員)
椎間板ヘルニアは、脊椎骨と脊椎骨の間の「椎間軟骨(板)」の病気です。一方、骨粗鬆症は骨がもろくなる病気で、それぞれ病態が違いますから、合併することはあっても、椎間板ヘルニアが原因で骨粗鬆症になることはありません。
骨粗鬆症は一般に50歳前後から発病するので、26歳の方が骨粗鬆症にかかるのは稀です。若年の方の骨量が減少する原因として、(1)不規則な食生活でカルシウムの不足が続いた、(2)ダイエットのしすぎで栄養不足になり、女性ホルモンが低下するなどが考えられます。もし月経が不規則な場合は、婦人科を受診することをお勧めします。
骨粗鬆症を正確に診断するためには、脊椎のレントゲン撮影、骨密度測定(特にDXA法による脊椎の測定)、血液と尿の「骨代謝マーカー」の測定が必要です。前述の検査で、骨密度と骨質の両面から、総合的な骨の強度を判定します。MRI検査は、骨折の診断には役立ちますが、骨粗鬆症そのものを診断することは出来ません。
信頼のおける病院で、腰痛の主な原因が、椎間板ヘルニア、骨粗鬆症、その他の疾患のいずれかを明らかにして、正しい治療を受けてください。